正社員なら残業は当たり前、有給休暇は消化できないのが常識、といった現状が日本人の中での暗黙の了解となっています。若いうちはまだしも、年齢を重ねるごとにこうした状況が負担となり、週末は家でゴロゴロしてしまうというのがいわゆる日本のお父さん像です。また若者の中にも仕事に束縛されたライフスタイルに耐えられなくなり、あえてアルバイトやパートとして働く人がいるほどです。
よく日本人は働きすぎるといわれますが、海外の仕事や休暇に対する見方は一体どのようなものなのでしょうか?この点を少し見てみることにいたしましょう。もしかすると今後のライフスタイルの参考となるかもしれません!
働き過ぎが当たり前のワークスタイル?
先進国に見る仕事に対する姿勢
まずはヨーロッパにあるいくつかの先進国に目を向けてみましょう。たとえばドイツです。
自動車や機械の生産、そして輸出が盛んなことで知られているこの国は、不況に悩む近隣国とは裏腹にここ数年黒字経済を維持しています。このような状況からするとドイツ人は日本人並みに勤勉に働いているのではと感じる人も多いはずです。
もちろんドイツ人は勤勉です。しかしその働き方にはメリハリがあります。まず自分に割り当てられた仕事を一生懸命にこなし、他の仕事は担当者に任せるというのがドイツ人の考え方です。つまり割り当てられた仕事を時間内に終わらせれば残業をしなくて済むために、皆が自分の仕事に打ち込むのです。このような思考は仕事効率をアップさせます。
それでいてこの国では旅行などのために長期休暇を取ることが普通に行われています。また医師に就労不能証明書を作成してもらえば数週間の病気休暇をもらうことができ、その間も給料は支払われるというシステムになっています。仕事をするときにはそれに打ち込み、オフはオフ、そして体調が悪くて仕事ができないときは休暇を取って早く治療し、回復後に全力で仕事に臨むというこのメリハリがドイツを世界の経済大国に押し上げたのです。
次にスウェーデンの労働状況をチェックしてみましょう。
人口が少なく、高い税金を支払わなければならないこの国の人たちはドイツ人とは異なり、時期によっては残業を強いられることがあります。しかし日本と大きく異なるのは休暇の用い方です。先にも述べたように日本人は有給休暇があっても仕事が忙しく、それを消化することができません。中には有給休暇を買い取ってくれる企業もありますが、そのようなところはそれほど多くないのが現実です。しかしスウェーデンの場合、有給休暇を消化できるようなシステムが国全体を通して貫かれています。
多くの企業は社員が夏の時期に長期休暇を取得することを許可します。そのためこの国では夏の時期にバカンスを楽しんだり、自宅でゆっくりと休むことが一般的となっています。そして国民が心置きなく休暇を楽しめるよう、ツーリストを対象とするレストランやショップ以外は全てクローズするのが一般的です。また公の交通機関の本数も少なくなったりと、国全体が休暇モードに入ります。やはりこの国でも働くときは働き、楽しむときは楽しむというメリハリのあるライフスタイルが常識となっています。
アメリカに見るワーキングスタイル
先進国と聞いて真っ先に思い浮かぶ国の一つはアメリカでしょう。この国もやはり仕事に対するメリハリ、そして長期休暇の取得に関してヨーロッパの先進国と同じような姿勢を貫いていると思いがちですが、実は状況はかなり異なります。日本人の有給消化率が約30%に対し、ヨーロッパには90%近い消化率を誇る国もあります。それに対してアメリカは50%台と、極端に高いというわけではありません。
しかし日本とは異なる点が多々あります。年功序列が当たり前の日本とは異なり、アメリカでは実力や実績が評価されます。
そのため職場では個々の社員を尊重し、割り当てられた仕事をきちんとこなすことに重きが置かれます。しかしアメリカ人は家族を非常に大切にするために、家族のために時間を過ごす目的で休暇を申請する人に対しては非常に協力的です。また家族と共になるべく多くの時間を過ごすために、自宅でインターネットを用いて仕事をする人もいます。企業に勤めている人の中にも夕方5時までオフィスで働き、残りの仕事を自宅に持ち帰って行う人もいます。
このようなことが許されるのは特定の仕事が個人に対して与えられており、その人は期限までに仕事を終える責任があるものの、どこで行うかは個人の自由であるという風潮だからでしょう。また仕事の結果は年齢に関わりなく高く評価されるために、仕事に対する社員のモチベーションも高いわけです。
また長期休暇を取得し、旅行を楽しんでいるもののパソコンを用いてクライアントとメールでやり取りをしたり、家族がそれぞれ自由な時間を楽しんでいるときに仕事を行うといった仕方で上手に休暇を満喫している人も大勢います。
不況が続く中で忙しい毎日を送っている人は日本に大勢います。しかしインターネットの普及や外資系企業の日本進出に供い、仕事に対する日本人の見方にも多少の変化が生じています。もちろん国民性に合った仕方で働くのがベストですが、リフレッシュも非常に重要ですので許される範囲で休暇を楽しみたいものです。