人が亡くなったときは、その人の財産を配偶者や子どもなどが引き継ぐ「相続」が発生することになります。
この相続の際、「相続税」が課されることがあります。
相続税については、「親が亡くなって実家を受け継いだが、相続税が高くて大変だった」とか、「最近相続税が増税になったらしい」など、不安になるような話を聞きかじったことのある人も多いかもしれません。
相続自体は、誰にでも起こり得るものです。いざという時に備えて、相続税とはどのようなものなのか、大まかに知っておいても損はないと思いまとめてみました。
ただ、税制などは頻繁に変わるものなので、2015年7月段階で簡易に整理したものとお考えください。
相続税に関する基本
相続税の対象になる財産とは
相続税が課される財産は、現金や預貯金だけではなく、土地や家屋、有価証券や貴金属、有価証券や特許権、貸付金など、経済的価値のあるものすべてが含まれるとされています。
また、死亡保険金や死亡退職金も、相続税の課税対象となります。
また、「相続時精算課税制度」の適用を受けている場合は、その適用を受けて贈与された財産についても、相続財産の価額に含めることになります。
これらの金額を足した遺産総額から、葬式費用や債務、死亡保険金・死亡退職金のうち一定の額などの金額を引き、さらに相続税の「基礎控除額」を差し引いて、「課税遺産総額」を求めることになります。
課税遺産総額がマイナスになった場合は、相続税を納める必要はありません。
なお、相続開始前3年以内に被相続人(亡くなった人)から贈与された財産については、原則として相続財産に加算されることになっています。
相続税の基礎控除額とは
ここで気になってくるのが、前述の「基礎控除額」という言葉ではないでしょうか。
相続税の基礎控除額は、以下の式によって計算します。
3000万円+600万円×法定相続人の数
なお法定相続人とは、法律で定められた、相続人になれる人のことを指すとされています。
たとえば法定相続人が3人の場合は、
3000万円+600万円×3=4800万円
で、基礎控除額は4800万円となります。
なお、相続税の基礎控除額は、平成26年12月31日までの相続については「5000万円+1000万円×法定相続人の数」とされていました。
先ほどの法定相続人が3人の場合に当てはめると、基礎控除額は8000万円。税制改正によって、大きく縮小されたことがわかります。
これまでは「うちには相続税は関係ないだろう」と思っていた人であっても、基礎控除額が縮小されたことで、相続税が課されるようになるケースが考えられます。
相続税の計算の仕方
課税遺産総額がプラスになった場合には、相続税を納めなければならないことがあります。
相続税は、どうやって計算すればいいのでしょうか?
たとえば、課税遺産総額が4000万円、法定相続人が、被相続人の妻・長男・長女(いずれも成人)の3人だったと仮定しましょう。
まず、この4000万円を、民法に定められた法定相続分に従って分けたものとして、各人の取得分を計算します。
この場合、妻が半分の2000万円、長男と長女がそれぞれ1000万円ずつを取得したことになります。
さらに、各人ごとの取得金額に応じた税率をかけます。
2000万円にかかる税率は15%(控除額50万円)、1000万円にかかる税率は10%とされています。
(2000万円×15%-50万円)+(1000万円×10%)+(1000万円×10%)=450万円
この450万円という金額が、相続税の総額となります。
どの税金を見ても同じ感想ですが、小さい数字ではないですよね。
さらに450万円を、実際の財産の取得割合に基づいて振り分け、各相続人が納める税額を算出します。
このケースでは、法定相続分通りに妻・長男・長女が2:1:1の割合で財産を分けたと仮定しましょう。
すると、450万円という金額は、妻に225万円、長男と長女にそれぞれ112万5000円ずつと、分けることができます。
なお、被相続人の配偶者である妻に関しては、実際に取得した遺産額について、法定相続分に相当する金額および1億6000万円のうち、どちらか多い金額までは相続税がかからないとされています。
今回は法定相続分に従って財産を分配したと仮定しているので、妻は相続税を納めずに済むでしょう。
従ってこのケースでは、長男と長女に割り振られた112万5000円、合計250万円が、納めるべき相続税の金額となります。
相続税対策のひとつ 生前贈与
後に遺される家族など、相続人となる人の負担を少しでも減らすために、生前に相続税を減らすような対策をとっておきたいと考える人も多いでしょう。
相続税対策としてよく挙げられる方法に「生前贈与」があります。
生きているうちに、ある程度の財産を分けてしまえば、相続税が課税される財産の金額を減らすことができます。
ただし贈与にあたっても、一定の金額を超えてしまうと「贈与税」が課されることになります。税率も高いため、注意が必要です。
一定の要件を満たしていれば、通常よりも大きな金額を贈与できることがあります。
たとえば子供にマイホーム資金を援助したい時や、孫に教育資金を贈与したい時などに、ある程度まとまった金額を、贈与税を納めずに贈与できる制度があります。
また、前述の「相続時精算課税制度」も、2500万円の特別控除枠が利用できるため、通常より大きな金額を贈与できる制度として、紹介されることが多いようです。
このような制度を利用するためには、それぞれに決められた要件を満たしていなくてはいけません。また、必要な手続きもあるので、注意が必要です。
事前に、自分たちが利用できる制度なのかどうかを、きちんと確認しておく必要があるでしょう。
なお、相続税対策になるからと言って、安易に贈与をすることも考えものです。
例えば、家族持ちの長男だけにマイホーム資金を贈与した場合、いざ相続が起こってみると、他の兄弟から「生前にお金をもらっておいて、遺産も平等に分けなければいけないのはおかしい」などといった不満が出るかもしれません。
よかれと思ってやった相続税対策が、かえって相続争いの種となってしまうことがないよう、注意する必要があるでしょう。
有効な相続税対策は、生前贈与だけとは限りません。
相続税対策は、早めに考えておくに越したことはないでしょう。しかし、だからと言って焦ることはせず、あくまで自分のケースに合った対策をとりたいものです。